身近かつ魔法のようなしばる技術によって、柱の上に梁を固定させることができた。さらに、梁への垂木の固定もしばる、垂木への横棒の固定もしばる、横棒への茅の固定もしばる。どこでもしばる。日本列島の最初の建物は、しばって、しばってひたすらしばって造られていたのである。こうした古来のしばりを現在見ようと思ったら、飛騨高山の合掌作りの屋根裏に登ってみたらいい。あの大きな屋根を支える丸大材は、ナワでしばられているだけ。
[参考情報]
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ホゾや金物による接合に慣れた目には不安になるが、ゆるみそうで大きくはゆるまないし、切れそうで建物がバラバラになるほどは切れない。最初の建物はしばって造られていたのだが、磨製石器そして本格的には鉄の切削道具の出現によって木組みが可能になり、しばる技術は建物本体からは追放されて外回りの丸太足場でしか生きられなくなり、さらに足場の鉄製化によって、ついに建築の世界から消えていった。しかし、私は、この亡びた技術にちょいと関心が湧いてきている。きっかけはわが家の工事だ。御存じの読者もいると思うが、わが家は〈タンポポーハウス〉とも呼ばれ、壁から屋根にかけてタンポポが帯状に植えられているのだが、そのタンポポの帯と帯の間には鉄平石が二枚、羽重ねにして取り付けられている。問題はこの鉄平石を下地のステンレスのバーにどう固定するかで、当初は、ボルトで締めて取り付けようと考えたが、そうすると、凸凹のはげしい自然石の正確な位置に穴を開ける精密加工が必要になるが、そんなことは建築ではできない。正確に穴を開けたとしても、ボルトで締めるとちょっとした変形ですぐにパリッと割れてしまう。形状にばらつきのある自然の素材を、均質精密を旨とする工業製品で固定するのはどうも無理があるのだ。
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